試しにやってみた。

計算の仕方がわからないけど、実際長いことローマ人が使っていたのだし、できないこともなかろうと思っていろいろ試行錯誤してみた。そして、わかったことは「ローマ人たちはどこかで足を踏みはずした」ってことです。連中、半端ない、全っ然わからない。なに考えてたのか不明、そんな僕を踏んで下さい女王様って、あまりにローマ数字がかけられないから、代わりに不明と踏めをかけちゃうほどわからん。さすが全ての道が通じてるだけあるわ。

具体的にいうと彼らは「4」と「9」の書き方を誤った。悪魔に囁かれとる。たとえば、下で例にだした「MDCLXVI(1666)」に「II(2)」をかけたとすると、答えは「MMMCCCXXXI(3332)」です。

    MDCLXVI(1666)
         II(2)
MMMCCCXXXII(3332)

うわあ、なにこれ。まず桁がわからん。桁を意識して空白をいれると「M DC LX VI」です。そもそも、彼らの頭の中で「1666」は「MDCLXVI」なのだろうか、それとも「MCCCCCCXXXXXXIIIIII」に近いんだろうか、まあ、そのあたり、どういう風に見えていたのかわからないけど、

                   MCCCCCCXXXXXXIIIIII(1666)
                                    II(2)
MMCCCCCCCCCCCCXXXXXXXXXXXXIIIIIIIIIIII(3332)

で、重複する「C」「X」「I」を十個まとめて、位をあげる。あるいは、

       MDCLXVI(1666)
            II(2)
MMDDCCLLXXVVII(3332)

これを下からか上からか知らないけど、上位の位にまとめれるものをまとめる……なるほど、まあ、いいさ、これはこれでできるのでしょう。どういうことかっていうと、いまのは「数を二倍にするために、全部の記号を二倍した」わけです。ただ、この方法には致命的な弱点があって「CMXLIV(944)」とかが計算できない。つまり、アラビア数字で考えるところの「同じ桁」内で「記号の並びとして数詞のボリュームが反転してたり」すると、あっという間にだめ。

だから、桁が仮にわからなくても、左のほうにボリュームの大きい数字が来るように並んでいれば、単純に倍々にして計算できるけど、ここで「CM(900)」とか「XL(40)」がはいって来ると途端にできない。例えば、「CMXLIV(944)」に上の方法で「II(2)」をかけたとすると、

      CMXLIV(944)
          II(2)
CCMMXXLLIIVV(?)

もちろんなにかしらの数を表現した、こういう表記のローマ数字はないわけで、強引にまとめられるものをまとめて記号を入れ換えると「MMCCCXXXII(2332)」になります。ところが「CMXLIV(944)」の二倍の正しい解答は「MDCCCLXXXVIII(1888)」なわけで、見事に不正解。で、どうやったら正しい解答に辿り着けるのかが、さらに不明。

逆に「MMMCCCXXXII(3332)」を「II(2)」で割るってどうすりゃいいんだ……。そもそも「XXX(30)」を「II(2)」で割ることも困難に思える。いや、「II(2)」で割る程度なら「XXX(30)」なら「XXVV(30)」に変換して割るとか、「MMMCCCXXXII(3332)」なら「MMDDCCLLXXVVII(3332)」とかに変換して分ければいい。でも、例えばこれが「VII(7)」なら……。うわあ、つまりね、桁がどこで区切れているかわからないから、まともにやろうとすると無理。計算できない。

ていうかここまでは序の口で「II(2)」とかわかりやすい数ですらこれなのに「DCXCIV(694)」を「LXIV(64)」で割るとかどうすればいいんだ。僕らとしては、かろうじて頭の中でアラビア数字に変換して考えることができるから理解できるけど、これがローマ数字だけだとしたらきついわー。

たぶん、算盤に仕掛けがあるんだろうな。中国の算盤だって上の玉が「五」だし、なんか上の玉が二個とか三個とかのやつがあるよね、ああいう感じで。あとは計算を生活に合わすのじゃなく、生活で用いる単位を計算に合わせたりしてたんじゃないだろうか、大きな数字にならないようにとか、なってしまった場合は単位を動かすとか……うーん、さすがにそれは考えすぎか。というか、全般的に考えすぎて、いらない混乱をしている感じはするなあ。もっとプリミティブなところから体系的に堅実に考えたほうが良さそうだ。